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質素だが、実用性と美しさを兼ね備えた松江城

山陰地方で唯一天守の残る松江城は、様々な技法が各所に光る城であると言える。実質上、五重構造である天守には、全国でも数例しかない地下井戸が置かれ、籠城に備えた作りであることがわかる。豊臣氏の大阪城を模したその外見の中には当時の新技術の数々が用いられており、その中でも柱に木版を巻き付けその太さを増させる接柱(はぎばしら)は、当時の材木難を反映させた物であると同時に後の時代の建設にも用いられる優れた技法である。

荒削りの中身

建設当時、高級な木材資源が使えなかったなどの事情から内装の質はあまり高いものではない。しかし城主の堀尾吉晴の城作りは当時としても優れたもので、実用性と出来る限りの美しさを備えた天守など、明治の廃城令の中唯一生き残った山陰の城として、その気品は衰えていない。